~記憶の護り手~

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  暗い道であったが、寒さなどは感じない。 不思議な空間である。 リアラルクにはこうした地下室が他にも幾つか存在する。 禊を行う部屋は、先程ライが使用した。ユメイはミズキ同伴で一度だけ、動力室に入った事がある。 精霊召喚師(エレメンタラー)を冠した祝いにと、本来の仕事を見せてくれたのだ。 思い出しながら、ユメイはやがてミナギに追い付いた。 暗いままの空間。無数の灯りが幾つかの円を成して点々と佇んでいる。 「迷わず辿り着いたのう。」 「えっ?」 「此の道は【選別の糸(ディレクション)】…資格無き者、迷いの深過ぎる者は何人であろうとも経路を外れ、入口に戻される仕組みなのじゃ。」 「そうだったんだ!」 「ライ。そなたの一族は幾度か此処に来ておる様じゃが…目的は毎度、同じか?」 「少しずつではあるが、変わって来たな。血が、薄れて来ている。…少し、しておこう。」 ライはそのまま、慣れた様に歩みを進める。 やや奥手に在る円の中に入ると、トプン、と水に飲まれる様に姿が消えた。 「あっ!」 「ほれ、そなたとルリは此方じゃ。」 「いっつもササーッと行っちゃうよね…怖くないのかな…。」 「私達も見習わないといけませんね。」 「本当だよ……」 導かれる円の前に立つ。 此の暗い泉(と思しきもの)の中には一体、何があると言うのか。  
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