~記憶の護り手~

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  「あの、此処は……」 ルリが尋ねると、ミナギは隣に寄り添いながら答えた。 「【忘却の泉】。ある者は此処から記憶を、ある者は必要な知識や道具を得て戻って来る。但し、選べるのは一度の入水につき、ひとつだけじゃ。」 「私も、何かを失っているのですか?」 「其れは今から、そなたが其の麗しき(まなこ)で見るべきものじゃ。悪しき者は()らぬ。前向きに行くがよい。」 「…はい。」 ホッとした様に微笑むと、ルリは一度円の縁に腰を掛ける。「行きます!」と少しだけ自分を励まし、静かに飛び込んでいった。 ややあってミナギはユメイの側に佇む。 「ユメイ。お主にはひとつだけ、先に渡しておく物がある。」 「此れは?」 「【光の欠片(レイピース)】…万が一、白夜の干渉を受けた場合は此れを足許で割れ。」 「え!来るの?」 「こんな場所まで!」 ユメイは受け取りながら、もたらされる状況に動揺した。 相手を前にして動けなかった過去が甦る。腰に掛けた剣が僅かに重く感じた。  
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