~記憶の護り手~

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  「(おのの)いておるのか?わからんでもないが…ディッセも無事ゆえ、ちっと構えよ。」 「ほんと?!」 「白夜は人の隙間を狙う。」 「隙間?」 「“弱み”とも言うのう。そなた自身の不安に、一時でも心を許すでないぞ。」 「う、うん。」 言われると余計に不安は増すものだ。 ユメイは此処でも己に落ち着けと言い聞かせた。 「風は揺れ易い。時に、人の意を待たずして吹き荒れる。上手く付き合うて行かねば。」 「わかった。えっと…」 「“真言(スペル)”か?無いぞ」 「…嘘でしょ?」 「本来の風は【()(しろ)】を媒体とし、自然へ呼応し発動するものゆえ」 「折角解除(リリース)したのに、自由に使えないって事?!」 「察しがよいのう!流石はトトキの」 「わ~!それもう、いいです!」 満面の笑みで答えるミナギを静止して、ユメイは半泣きの表情を呈しながら泉へ飛び込む。 迸る水飛沫を受けながら、ミナギは呟いた。 「わらわも忙しゅうなるのう。急ぎ、戻らねば!」  
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