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その内、自ずとイスラエル軍への報告も疎かになって行った。
そして、焦るヴィンリーの心を、まるで弄ぶかの様に、グリゴールが店に連れて来たのは弟のイリアの方であった。
以来、ヴィンリーはグリゴールとイリアの二人を相手にする事となったのだが、此処に至って、ウール エルデンと言うトルコ人と軍部を通して知り合ったため、ヴィンリーの立ち居振舞いは非常に困難なものとなってしまった。
無論、ユダヤの同志であるウール エルデンを裏切るつもりなど全くないのだが、下手な事をして有らぬ疑いを持たれないとも限らない。
また、ネオナチの連中に対しては、自分の素性が知れたら、確実に命を狙われる。
損な役回りだが、グリゴールに接近したのは自分の判断ミスだ、解決するに際して、誰の力も借りる訳には行かない、ヴィンリーはいざという時の覚悟はしていた。
この日は、開店早々に弟のイリアが一人でやって来た。
この時間帯は、ウール エルデンと鉢合わせする恐れがある。
カウンター席に座ったイリアが、妙にニヤついている。
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