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そのまま、何処でもいいから別の場所に行って、時間を潰して来るべきだったと、後々、ウールはこの時の行動を思い出す度に後悔する事になる。
つまり実際のウールは、この時この場から立ち去りはしなかったのだ。
正にこの時、何処で何をしようかと考えていたウールの目に留まったのが、“ヴィンリーのbar”と隣の建物との間の狭い通路だった。
運命の別れ道とは、こう言うものなのだろう。
ウールは何かに取り憑かれたかの様に、その通路に向かって歩き始めた。
そして、ウールがその通路の入り口まで、あと数メートルの辺りにさしかかった時、偶然にも通路の奥の方から出て来たヴィンリーと顔を合わせた。
しかし、ウールに挨拶はおろか、笑顔をつくる暇も与えない程素早く、ヴィンリーは首を左右に小刻みに振った。
そして、その表情が極めて真剣なものだった事から、ウールは咄嗟の判断で、その場にしゃがみ込み、靴紐を結び直す振りをした。
その直後、髪を短く刈り込んだ、若い男がヴィンリーのすぐ後ろから出て来た。
日も暮れかかり、辺り一帯が徐々に夕闇に包まれつつある。
しかし、ウールはその男がネオナチであると一目で悟った。
見れば、二人を異様な緊張感が包んでいる。
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