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その事件以来、ウールはずっとアパートに閉じこもったままで、外部との接触は完全に絶っていた。
但し、ヴィンリーからの電話だけは別だった。
いや、寧ろ、ヴィンリーが唯一の情報源であり、その指示を待っていたと言う方が正しい。
ウールには、これ迄、生きた人間を撃った経験はなかった。
それ相応の覚悟はしていたつもりなのだが、いざ経験してみると、その心中は、およそ想像の及ぶ領域のものではなかった。
ウールの記憶では、引き金が思ったよりも軽かった事と併せて、打った数は3~4発だったのだが、実際に目の当たりにしたヴィンリーの言うには、瞬く間に全弾打ち尽くし、尚も繰り返し空打ちしていたと言う事だった。
その後の記憶も朧ろ気で、話し掛けて来るヴィンリーの顔、走っていた事、車のハンドルを握りしめていた事、等を断片的に覚えている程度だった。
これではヴィンリーを助けたのか、それともヴィンリーに助けられたのか、分からないとウールは思っていた。
そんな矢先に、ヴィンリーから電話で、ウールは自分が倒した相手が、イリア ジェレフと言う名の、弱冠14歳の少年だったと言う事を、聞かされた。
それは、事件から2日後の事だった。
そして、その事実が、ウールを大いに苦しめる事となった。
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