3人が本棚に入れています
本棚に追加
住職の死――それは、玄世にとっては、とてつもない損失だった。
あわただしく葬儀が済むと、和己は、墓場立ち尽くす玄世の後ろに立った。
「えと、お気の毒だったね。憲玄さんのこと……」
本当は邑里もと言いたかった。邑里は、この償いのために、少年院に送致された。余罪はまだまだあったのだという。
「いいんです、自分がもてあそばれたのではないかという疑いは常にもってましたから」
「玄世さん……」
あの、と言いかけて口ごもった。それから、口に出した。
「邑里さんの代わりに、私じゃだめ?」
玄世は驚いた顔で振り返った。それからはにかみがちに笑顔になった姿を、和己は見た。
これからは。
この人の手をとって生きていこう。
迷うことなく。揺らぐことなく。
最初のコメントを投稿しよう!