第1章

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「ほら、和己(かずみ)。起きて! おばあちゃんちに行くわよ」 「ええ、面倒くさーい」  お母さんに叱られて、しぶしぶうなずいて和己は起き上がった。今日から数日はレスリング部もお休み。  あの屈辱的な日も過ぎた夏休み。  電車に揺られて二時間、ようやくついたところはすこぶる田舎だった。 「小さいときから楽しいと思ったことなかったんだよね。っげー田舎」 「ほら、しゃんとして! もうすぐお坊さんがやってくるから」  などと畳の部屋でやっていたら、おばあちゃんがスイカを運んできてくれた。 「かっちゃん、よく来たの。なーんもないけど、まあゆっくりしてってなー。坊さんが来たら正座で座っていなきゃならんけども」  お母さんとおばあちゃんはふたりでやりとりしている。退屈でしかたなかった。 「あ、スクーターの音。来たんじゃない、お坊さん」
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