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「弗設魔訶般若波羅蜜多心経―」
いつもの年とったお坊さんじゃない。お坊さんだけど、髪の毛があって、ずいぶん若い。和己と同じくらいに見えるほど。数珠をまさぐりつつお経を唱えるその姿は凛々しくて。
ついぽーっとなってしまう。
「和己、正座!」
「あ、うん、ごめん」
ぽーっとしていたら、笑われてしまった。
「崩していていいですよ。強制するつもりはありませんから」
袖で軽く口元を隠して笑う、その姿にドキっとして。お坊さんの背中と見え隠れする横顔ばかり見ていた。相変わらず、足は痛かったけれど。
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