第1章

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「それでは」 「はい、今日はどうもね」  おばあちゃんと玄世さんがやりとりする、その後ろでお母さんが黙っていられないように割り込んだ。 「あらー、今日はずいぶんとお若い人だこと」  お母さんは物怖じをしない。  ねえねえねえと詰め寄って聞いている。こっちはこっそり見ているので精いっぱいなのに。なんだこの差は。 「ねえ和己。この方、村の高校に通いながら副住職してるんですって。お若いのに偉いわねえ。あんたと一つしか違わないんですって」  振り返り、こっちへおいでおいでと手を振る、その母に向かって、和己はどういう顔をしていいかわからなかった。  思うことはただひとつ。  余計なことを話さないでお母さん。こっちは心臓がばくばくなんだから。 「あ、あのう」  変なふうに声が裏返ってしまい、ため息をつく。 「由江(よしえ)さんのお孫さんでしたか」 「は、はいい」  裏返った声が、ああ、みっともない。 「わたく、し! 秀永和己(ひでなが・かずみ)と申しま、す!」  それだけ言うのが精いっぱいだった。くすくすと眼鏡の男の人は美しく笑う。 「お祭りがあるんです、明後日。ぜひ、和己さんも来てくださいね」 「そ、それって!」  手を大きく挙げて言う。 「手伝い、いりませんか? 高校生ボランティアなんてどうでしょう」
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