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「それでは」
「はい、今日はどうもね」
おばあちゃんと玄世さんがやりとりする、その後ろでお母さんが黙っていられないように割り込んだ。
「あらー、今日はずいぶんとお若い人だこと」
お母さんは物怖じをしない。
ねえねえねえと詰め寄って聞いている。こっちはこっそり見ているので精いっぱいなのに。なんだこの差は。
「ねえ和己。この方、村の高校に通いながら副住職してるんですって。お若いのに偉いわねえ。あんたと一つしか違わないんですって」
振り返り、こっちへおいでおいでと手を振る、その母に向かって、和己はどういう顔をしていいかわからなかった。
思うことはただひとつ。
余計なことを話さないでお母さん。こっちは心臓がばくばくなんだから。
「あ、あのう」
変なふうに声が裏返ってしまい、ため息をつく。
「由江(よしえ)さんのお孫さんでしたか」
「は、はいい」
裏返った声が、ああ、みっともない。
「わたく、し! 秀永和己(ひでなが・かずみ)と申しま、す!」
それだけ言うのが精いっぱいだった。くすくすと眼鏡の男の人は美しく笑う。
「お祭りがあるんです、明後日。ぜひ、和己さんも来てくださいね」
「そ、それって!」
手を大きく挙げて言う。
「手伝い、いりませんか? 高校生ボランティアなんてどうでしょう」
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