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――十二年後。
今年も山桜は、その大木に見事な花を咲かせている。
この十二年間、度々“それ”の視線を感じることはあった。
しかし、別段何をしてくるでもなかった為、白月は“それ”のことを「きっと桜の木に宿る妖」くらいにしか考えていなかった。
時は黄昏を迎え、今日も“それ”は自分を見ていた。年を重ねるにつれ、白月は“それ”の正体が気になり、いつしかその姿を見てみたいと思うようになっていた。
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