逢魔が刻

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   そこに先ほどまで感じていた視線はなく、巨大な桜の幹の前で思わず首を捻る。 (やっぱり、人には見えないのかな?)  諦めて屋敷に戻ろうとした時、 「ひっく」  頭上から間の抜けたしゃくり声が聞こえ、天を仰ぐ。 「!」  視界に飛び込んできたものの姿に、白月は目を見開く。  そこにいたのは、淡い紺色の着物に赤紫色の羽織を着た、一人の青年だった。歳は見たところ、弥一と同じ二十五、六くらいだろう。  
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