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白月は一瞬びくりと身を竦める。だがすぐさま眼前に現れた“それ”の瞳を覗き込む。
威嚇が無駄だと悟ったのか彼は牙を収め、問う。
「お前、俺が怖くないのか?」
「なんで? 怖くないよ」
白月の発したその台詞に、彼は驚き目を見張った。
「そうか、お前あの家の……」
ぽつり独りごち、そして、そっと妖しげに光る赤紫色の目を伏せる。喉を鳴らし笑った後、前屈気味だった体を起こす。
「馬鹿か、俺は鬼だぞ」
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