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――― ちゅ。
絡まる舌が水音を立て、それが急速に覚醒を促した。
一度、ぎゅっときつく目蓋を閉じてから、開く。
目の前にある、障害物を避けて視線を部屋に巡らせる。
見知らぬ天井、明るすぎるくらいの照明。
壁の装飾は、個人の家とは思えないくらい華美で安っぽかった。
そしてそれは、誰かの肩越しの世界。
至近距離、斜め上の障害物は、よく知った人物の顔だった。
「…ま…みや、さん?」
酷く掠れた声しか出ない。
見下ろす双眸は、目が合うと僅かに弧を描いて。
間宮の顔が、近づいたかと思うと視界から消えた。
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