ままにならぬが浮世の常-2

3/20
前へ
/20ページ
次へ
――― ちゅ。 絡まる舌が水音を立て、それが急速に覚醒を促した。 一度、ぎゅっときつく目蓋を閉じてから、開く。 目の前にある、障害物を避けて視線を部屋に巡らせる。 見知らぬ天井、明るすぎるくらいの照明。 壁の装飾は、個人の家とは思えないくらい華美で安っぽかった。 そしてそれは、誰かの肩越しの世界。 至近距離、斜め上の障害物は、よく知った人物の顔だった。 「…ま…みや、さん?」 酷く掠れた声しか出ない。 見下ろす双眸は、目が合うと僅かに弧を描いて。 間宮の顔が、近づいたかと思うと視界から消えた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1209人が本棚に入れています
本棚に追加