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身動き出来ずに、目を瞬く。
「迷うなら、帰んないで」
「迷ってるわけじゃ…」
「帰んないで」
切なく囁く、伏せられたその瞳に見入るうち、手にした受話器に男の手が添えられる。
かすかに、発信待ちの電子音。
取り上げられて、定位置に戻された。
「嫌ならなんもしねぇから。いればいいよ」
面倒だし、ってよくわかんない言いわけを付け足すから、少し気が抜けた。
逸らした目は、気まずそうでいて頼りなげ。
惹き込まれて、手を伸ばしそうになって踏みとどまる。
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