女の専売特許とは

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ふっと何気に視線を上げると、じっとこちらを見下ろす視線と絡まって、首を傾げる。 男は、何か言おうとしたのか唇を少し動かしたけど、逡巡し閉ざしてしまった。 その仕草が不審に移り、私の顔はますます眉間に皺が寄る。 「何?」 「まぁいいや。じゃあな」 「…?うん?」 カンカンと鉄の階段を上階へ登っていくのを、首筋を摩りながら見送った。 何が言いたかったんだろう。 いや、要件は私の迂闊を非難しにきたんだろうけど。 何か腑に落ちなくて暫くその場に留まるが、不意に時間が気になって腕時計に目を向ける。 「あー!もう!時間ないじゃん!」 受付に戻るしかなく、また舌打ちを響かせた。
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