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早く戻って、またお酌に回らなければと思っていたのだけど。
もう酒が回りすぎて、盛り上がってる場所は勝手にやってるし、お開きモードのところはそれぞれ部屋に帰り始めているらしい。
甘えるような仕草で、先輩が矢野さんの腕を引く。
眉尻を下げて、矢野さんが笑って頷く。
そうだ。
あの苦笑いは、先輩のもの。
「俺ら、ちょっと外の店見に行くよ」
旅館の正面玄関を出た大通りには、いくつも観光客の為の店が立ち並び、浴衣姿が幾人も通り過ぎるのがロビーからでも伺える。
ふと時計を見れば、時刻はまだ9時を少し過ぎたところだった。
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