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カウンターに戻ると原口さんが暇そうに俯いて顔を隠し、欠伸を噛み殺していた。
「ごめんなさい、遅くなって」
「あぁ、いいよ。どうせ先輩に頼めなくて自分でやってたんでしょ。来客準備」
「う………」
図星を突かれて黙り込むと、呆れたような溜息の音がする。
「言ったじゃない。そのうち業務に支障が出るよって」
「ん……。気をつける」
隣に座って、すました顔で正面を見る。
この時間はそれほど受付を通る人間は多くないが、それでもきょろきょろよそ見をするわけにはいかない。
「そうじゃなくて……もう。間宮さんには?相談してないでしょ」
「ん、うん。そのうち……」
私ののらりくらりとした返事のせいで、原口さんの声に苛立ちが混じるのがよくわかる。
そうは言っても、亨に相談なんて出来るわけもないし向こうからだって何の連絡もないし。
別に、会わなくたって相談なんかしなくたって、どってことない。
あんな嘘つき。
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