気づけば落ちているんだそうです。

23/40
前へ
/40ページ
次へ
「ごめん!」 オーダーを終えて、店員がテーブルから離れた途端のことだった。 矢野さんが、突然私に向かって頭を下げた。 「えっ?! ちょ……やめてくださいっ」 慌てた私は、顔を上げて欲しくて両手を差し出した。 けれど、テーブルに伏せられた矢野さんの頭に触れるわけにもいかず、おろおろと空中で両手が彷徨っている。 中々頭を上げない矢野さんに、私はもう一度言った。 「やめてください。一体、何の話なんですか?」 私には、矢野さんに謝られるような覚えはない。 戸惑っていると、矢野さんがゆっくり顔を上げて、申し訳無さげに言った。 「さやかが、日曜のことでよく確かめもせずに一方的に倉本を悪者にしてるだろ」 そして深く溜息をつく。 矢野さんに、日曜に颯介君と歩いていたことが伝わってるのか気にはなっていた。 もしかしたら、相田先輩の言葉をそのまま信じているのだったら、哀しいと思っていたけれど、そうではないらしい。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1282人が本棚に入れています
本棚に追加