気づけば落ちているんだそうです。

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「と……とにかく、さやかには日曜の話は皆に謝って訂正するように言って聞かせるから。ほんとは、さやかをちゃんと連れてきて謝らせたかったんだけど……」 ごめんな、と矢野さんがもう一度頭を下げたところで、食事が運ばれてきて、話は終了した。 後は他愛ない雑談をしながら食事を終えて、店を出る。 「じゃ、二人はこれから飲みに行くんだよな? 気をつけてな」 店を出てすぐのところでそう言って、私たちとは反対方向へ歩き始める矢野さんを、私は引き止めた。 「あのっ!」 咄嗟……というか。思いつき、というか。 だけど、小さな小さな恋心を終わらせるチャンスだと思ったし、今を逃したらもう二度と言えない気がした。 だって、さっきまでの会話で、十分わかったから……矢野さんが、相田先輩のことほんとに可愛いと思ってて、大事なんだということが。 「私、矢野さんのこと、ずっと憧れてたんです。だから、きっと相田先輩不安にさせたんだと思います」 好きでした……それは、少しだけ形を変えて。 それでも、伝える機会が出来て、良かった……そう思えたから、私は笑顔で言葉にできた。
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