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「でも今はちゃんと、亨さんと付き合ってますし……ちゃんと彼のことが好きですから。そう、先輩に伝えてください」
恥ずかしくて、最後はお辞儀をして顔を隠した。
すぐに身体を起こしたけれど、視線はアスファルトの路面を見つめて、矢野さんの方は見れなかったのだけど。
矢野さんの、含み笑いに思わず視線がそちらに戻された。
「月曜、間宮が焦って倉本に会いに行って、その後戻ってきた時」
「……はい?」
「俺仕事中なのに、強引に腕引っ張って喫煙所に連れて行かれてさ何事かと思ったら『あの性悪女、いいかげんになんとかしてくださいよ!自分の女の手綱くらいしっかり握れないんすか』って……俺一応上司なんだけど」
な……なんちゅーことを……!
狼狽えて私はもう一度、さっきよりも深々とお辞儀をして言った。
「す、すみません! 仕事中に……」
「ちょっと怖かったよ。女のことであんなに怒るとこ、初めて見た」
顔を上げると、矢野さんは何か意味ありげに笑っていた。
私は反応に困ってしまって言葉も出なかったのだけど……。
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