1282人が本棚に入れています
本棚に追加
「本気で怒ってた。大事にされてるんだな。間宮、結構ちゃんと倉本のこと見てるな、と思うよ」
そう言って、反応できない私に手を振って矢野さんは背を向けた。
平日のオフィス街、就業時間を過ぎれば駅に出るまでは急激に人が減る。もう夜九時を過ぎ、通り過ぎる人も少ない中、私と原口さんは矢野さんを見送った。
「大事にされてるんだって」
原口さんが、私を肘で小突きながら、言った。
「……そんなわけないし」
欲求不満扱いされたし。全然そんな風に見えないし。
好きって言葉も薄っぺらいし、信じられるはずないし。
「ぷっ……倉本さん、すぐ赤くなるよね」
「うるさいな、もう」
原口さんは、すぐ揶揄うよね。
私は彼女を横目で睨むが、真っ赤な顔ではきっと怖くもなんともない。
「間宮さんのこと、はっきり好きって言っちゃって、良かったんだ? もう『ほんとは付き合ってません』なんて言えないよ」
最初のコメントを投稿しよう!