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翌日、二日酔いで痛い頭を抱えつつ出勤すると、更衣室の扉を開けたところでやたらと明るい声に出迎えられた。
「倉本さん!おはよー!」
「……お…はよう、ございます」
放心状態で先輩の顔を見ていると、彼女はパンと両手を顔の前で合わせて「ごめんね!」と言った。
その後ろには、他の二人の先輩も揃って、苦笑いを浮かべている。
「私、早とちりだから……ごめんね、酷いこと言って。ちゃんとみんなに、説明しておいたから」
いや、先輩は私に酷いコトを言ったというより、私を無視して他所に酷いネタをばらまいたというのが真実なんだけど……ま、いいや。
細かいことを気にするのも面倒になった。
「いえ、大丈夫です。気にしてませんから」
にっこり、笑ってそう言った。
けど、その後も彼女から感じる壁は相変らずあり、誰も見ていないところではにこりともしないし、業務内容以外の会話は成立しそうになかった。
……つまり、今更仲良くする気はないということだ。
それでも、恐らく矢野さんに説得されて皆の誤解だけは解いてくれたのだから、良しとしよう。
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