気づけば落ちているんだそうです。

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「外はそろそろ寒いね。かなり明るいから、天気は良いのかな?」 「うん、雲は殆どないよ。日差しはあったかそうなんだけどね」 天気は良くても、風は冷たい。 それでも室内にこもるよりは外の空気を吸いたくて、音訳の休憩に日向ぼっこをしにベンチに座る。 あったかいミルクティとコーヒーを買って、コーヒーを颯介君に手渡すとくるっと指先でプルトップを辿って、引き抜いた。 私もプルトップを抜いた。 プシュ、という音と同時にほんのり甘い香りが風に乗る。 ひと口飲んで、深々と溜息をつくと、颯介くんが小さく笑った。 「今日、七回目」 「……嘘。数えてたの?」 「多分、七回目くらい。それくらい多いってこと」 何かあったの?と彼が私の方を見る。 ぼんやりとしか見えてないのだろう、焦点は少し虚ろだが優しい目で笑ってくれることに、促されたみたいにぽろりと言った。 「……全く気持ちの掴めない、雲みたいな人好きになっちゃった」
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