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私も一本、つくねを手に取ると3つ並んだ一個をぱくんと頬張った。
「ほんとに矢野さんが好きなの?」
「そうよ。そんなに意外?」
「意外よ。だってさー。今日の倉本さんの顔」
隣の親父のところに来た砂ずりがこんがり絶妙な焼き具合に見えて、思わず目を奪われた。
貧血予防に砂ずり頼もう、レバーは苦手だし。
そう思いながらつくねを咀嚼し飲み込もうとしていたところだった。
「かんっぜんに恋する乙女?いや、女の顔?あれって間宮さんの所為よねぇ」
「げぼっ」
「汚っ!」
原口さんが変なことを言うから、つくねの甘辛ダレが喉に引っかかった。
うっかり吐き出しそうになって、慌てて片手で口元を覆いつつ紙ナプキンに手を伸ばす。
「いや欲情してる顔、か?」
「よくっ…!」
紙ナプキンで唇をぬぐいながら横目で睨むけど、彼女は相変らずニヤニヤと楽しそうに唇を歪ませている。
「酷い。結局欲求不満って言いたいの?」
「違うわよ。ベタ惚れなんだなーってその時思ったから、意外だって言ったの」
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