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二人に気を遣って、笑顔はまるで石膏で固めたみたいに感情がこもってないのに、誰もそれに気づかない。
いや、相田は気づいてんだろうな……あの女、ほんと容赦ねぇな。
女なんて元々そんな姑息な手段を得意とする生き物だと俺は思ってたし、それくらい気の強い女の方が好きだけど。
流石に、不憫になった。
「慰めてあげようか」
店を出て、二人を見送った後。
酒が入りすぎて足元も覚束無い彼女の腰を捕まえて、そんなありきたりのセリフがするりと出た。
本性を知ったのは、首尾よくホテルに連れ込んだ後だった。
目が覚めてから髪は鷲掴みにされるわ、蹴り入れられるわ口は悪いわ。
とんでもねー二重人格で。
「このままハゲろ!」
ふざけんな!禿げてたまるか!
無駄に男の恐怖心を煽るんじゃねー!
だけど、ああ。やっぱ俺って変わってんのかも。
仮面みたいに凝り固まった彼女の笑顔より、このくらいの方が可愛いと思った。
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