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けいちゃんはにやっと笑ってから、黒板消しで残ってた文字を綺麗に消し始めた。
「先生、どうしたの?」
「…忘れ物」
「何?」
「これ、落ちてたよ、春日」
けいちゃんはあたしの手に、真新しい鍵を握らせた。落ちてた?って??? だってこれ、見覚えないし、あたしのじゃない…。
アタマの中、ハテナだらけのあたしに、けいちゃんは「鈍いね」って笑った。
もしかしてもしかしなくてもこれ…。
「新しく付け替えたんだ。中のリフォームもだいたい終わってる。家具とかカーテンとかは、千帆と決めたかったから、まだ中は何もないけど。俺、今日遅くなるから、春日、お母さんとでも見ておいで」
やっぱり。あたしたちの新居の鍵だ。
「これからもよろしくな、春日」
この鍵はけいちゃんとあたしの新しい未来を開く鍵。
先生だけど、あたしの彼。あたしの彼氏だけど、先生。大事な愛しい人。
これからのあたし達はどんな風になっていくんだろ。けいちゃんはあたしの、旦那様? パートナー? でも、どんな風に変わっていっても、一緒にいたい。この気持だけは失くしたくない。
「う、うん」
けいちゃんの言葉に頷いて、あたしは宝物みたいに鍵をぎゅうっと握りしめた。
(完)
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