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好きな人
突然だが僕には好きな人がいる。小針岬さんという名前で、僕と同じ大学二年生だ。
小針岬。その名前が示す通り、針のように細く華奢で背も小さくて、岬に立って水平線を眺めているかのように晴れやかな気分にさせてくれる、とても素敵な女の子なのだ。
実を言うとまだ片想いで、あまり話したこともない。正直に言うと高嶺の花で、好きになっても辛いだけだろうから、あまり関わらないようにしていた。だが、この前の飲み会、あれがいけなかった。
その飲み会当時の話、僕が周りの人の話を聞くふりをしつつ、ちびちびと独り飲んでいたら岬さんと目が合った。そのとき、岬さんは本当に、本当に可愛らしく微笑み、グラスを軽く持ち上げてちょこんと頭を下げた。名付けて、二人だけの遠距離乾杯である。
岬さんが頭を下げた拍子に長い髪がはらりと揺れ、戻るころには、僕はもう恋に落ちていた。
前置きが長くなってしまったが、バイトの依頼も来ないことだし、大学生の無駄に長い夏休みを持て余していた僕は大学に行ってみることにした。もしかしたら岬さんに会えるかも知れない、そう期待して。
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