wisteria

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
いつだったかな 君が帰り際 「藤の紫がキレイね」と 呟いたのは 僕もそれを見て 純粋に "キレイだな"と思った だけどどうだろう いつのまにか 藤の紫を 忘れていた 思い出してみたかったけど もう季節が変わってる 明るい月夜の日に 僕は闇にまぎれない 体を起こし 眩しすぎる 月を睨む 月に罪はないのにな 何でこんなに 明るいんだよ 一人で久しぶりに 過ごす夜なのに ここから見える 川原に 何かが静かに 揺れている なんだろう 子供のイタズラかな 僕は目を細めて 様子をうかがう 変わった様子はなく 眠くなる 月の後ろから 雲が抱きついて フェンスの影の升目に 闇を呼ぶ 強い雨が降ってきた 今日は雨もり しないかな 直せばいいのに そのままで ほっといたら ひどくなった 手頃なコップに 雫は落ちる それは悲しそうに 僕を映す 気にしないでほしいよな 今日は一人なんだから
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!