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開けられた窓から入って来る日差しに、下地真美は夢から現実へと連れ戻された。
(痛い……頭が痛い)
昨日の飲み会から、真美の記憶がはっきりしない。どうやって帰って来たか思い出せないでいる。
(ダメだ。もう少し横になろう)
ベッドから起き上がろうと思い、頭を上げたが、頭痛が酷くなりまた横になってしまった。
やけにシーツの感触が肌に残ると思ったら、普段睡眠時に着る寝間着を着ていなかった。下着だけで寝ていたのだ。
何処で脱いだか記憶が無かった。ベッドから部屋の中を見回すと、床に脱ぎ散らかしたスーツが目に入った。
いい加減酒の量を減らしたいと真美は思う。酔っているときは気分が良くても、後が大変なのだ。
真美は自己嫌悪に陥った。何かあれば女だからと言う嫌な上司、口を開けば結婚と言う親、子育ての話ばかりする友達。これらを忘れる為に、同じような境遇の仲間と酒を飲むのが真美の習慣だった。
結婚が幸せか? 出産が幸せか? 働くことは不幸か? 1人は不幸か?
毒を吐いて毒を飲むような飲み会は毎回盛り上がり、つい飲み過ぎてしまうのだった。そして真美は、朝1人で酔いから醒めてしまうと、酒で忘れていた嫌なことを思い出してしまうのが苦痛だった。
体が休んでいると頭ばかり活動する。真美は頭痛を堪えながら、もう起きようと、頭をマッサージしながらノロノロと起き上がった。
今更遅いがスーツがシワクチャになってしまっている。
整頓しようと思い立ち上がった真美は、スーツの近くに水風船が落ちているのに気づいた。そういえば近くの神社で祭が開かれていたのを思い出した。
きっと帰りに寄ったのだろうと真美は思った。ソースのついた空パックや、眼鏡をかけて髭を生やしたオッサンのお面も落ちていた。
近寄って片付けようとしたとき、真美はオッサンのお面と目があった。
「やっと起きましたか」
「ギャーーーーーーーー!!」
お面だと思っていたのに、急に話掛けられて真美は出したことの無い声を出してしまった。
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