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「嫌! やめて!」
「くそ! 近寄るな! アァァ!」
「イヤアァァ!」
大きな部屋に閉じ込められたわたし達。
仲間は次々に連れ去られて、姿を消していった。
「嫌だ! 僕は行きたくない!
誰か! 誰か助けて!」
救いを求めても、誰も助けることは出来なかった。
……そしてまた、若い子が犠牲になった。
「ちくしょう! 俺は負けんぞ!」
体の大きなリュウさんは、誰よりも執拗に狙われていた。
それでも、何度も暴れて危機を脱していた。
だけど、リュウさんが逃げ延びても必ず他の誰かが連れ去られていく。
連れ去られた後の事は、誰も何も知らない。
部屋に残るわたし達には、すくいの手は恐怖でしかなかった。
「もうやめて……こんなの酷いわ……」
わたしが油断した、その時だった。
ついに、わたしにすくいの手が伸びた。
「そんな! いやよ!」
わたしは、リュウさんみたいに暴れた。
体を最大限に動かして、部屋に戻るために必死になった。
……だけど、逃げられなかった。
わたしは、連れ去られた仲間と同じ。
リュウさんみたいに大きな体じゃないし、特別変わった容姿じゃない。
いずれ連れ去られる運命ならば、仲間を失う悲しみをもう味わいたくなかった。
みんなのために、そして、わたし自身のために。
わたしの生涯は、ここで終わり。
そう思い、わたしは暴れるをやめた。
あれから二年後……。
「ママ、金魚ってどのくらい生きるの?」
「長ければ10年は生きられるそうよ」
「そっか! 長生きしてくれるといいなぁ」
「そうね。ちゃんとお世話してあげなきゃね」
「うん!!」
こうしてわたしは、素敵なインテリアのある個室を与えられ、毎日ご飯をもらい、夢のような日々を優雅に送っている。
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