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暑い夏も過ぎ、さらりとした風が吹くそんな日も傾きかけた夕方、セッカイは骨ギターを背にかかえ、とある魚加工工場のある場所に向かっていた。
『村上さん今日居るかなぁ』村上とは魚加工工場で働く猫好きで音楽好きの村上である。この村上は変わり物で工場のゴミを利用して猫用の楽器を作ると言う変な趣味があるのである。
『おっ今日は
めずらしいお客さんだね』
とにっこり微笑みながらセッカイに魚の欠片を差し出した。
村上さんはいた。
『ふふ骨ギターかあ
調子悪いのかい?』
と村上さんは機嫌よく言う。
『にゃーーにゃーにゃ……』
『少し貸してごらん。』と言って村上さんはまじまじと骨ギターを眺める。
『ふーむここは弦を少し張って……ふふ高い音は……っと……』などと1人事を言いながら骨ギターのチューニングを始める。
『こんなもんかな。ぼうはこれ本当に好きなんだな。』とにっこり笑ってセッカイの背中に骨ギターをかける。
村上さんには、ぼうと言われている。
セッカイと言う名は黒猫のシュウが付けた名前だが、元々野良なので本当の名前は無い。
セッカイ自身はあまり名前がどうと言うのは無く気にはしていなかった。
セッカイは先日、見付けたメンコを村上さんの前に置く。
そしてくるりときびすを返し来た道を戻り…一度振り返り『にゃーー』と鳴く
『またおいで…ぼう』と村上はつぶやいていた。
帰り道セッカイはつぶやく……
『明日かな……晴れたら行こう。』
『あの白い家に……』
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