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セッカイはピアノと言う物を知らない
ただある日、知らない街角を通り過ぎ閑静な住宅街をうろうろ歩いていた時に猫にもわかる優しいメロディが聴こえて来たのである。
たぶんそのピアノのメロディだけだったらセッカイもそれほど気にはしなかったのかも知れない。
そのピアノのメロディに合わせて歌う猫がいなければ……
その歌う猫は白い家に住んでいると思う。
飼い猫だと思う。
思うと言うのはほどほどの柵があるので良く解らなかった。
少し乗り越えれば、容易く見れるのだが……
セッカイは見ようとしなかった……
その猫の歌う歌は鈴の音のように良く通る声で本当に綺麗だった……
だからセッカイは初めはほんの少し、ちょっかいを出したかっただけなのかも知れない……
その猫はユキちゃんと言われていた。
何度かその白い家の前を通った時に飼い主?が呼んでいるのが聴こえて来たのである。
『ユキ…………かぁ』
自分でも気づかないうちにそうセッカイはつぶやいていた……
『さてと……そろそろかな』セッカイは骨ギターを握り直す。
ピアノの優しいメロディが…
流れてくる……
ユキの鈴の音の様な歌が…
聴こえてくる……
合わせる様に骨ギターを
ゆっくり弾く……
ゆっくりとゆっくりと
流れる時間……
お互い顔もしらず、音だけが混ざり合う。
聴こえているかどうかもわからない。
でもとてもとても優しい時間が流れる
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