322人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
私は少し沈んだ気持ちを切り替えたくて、みんなの目に触れない給湯室に向かった。
まあ、ついでにみんなのコーヒーでも入れようかと、そんな気持ちで。
私がため息混じりにみんなのカップを並べていた時だった。
「あ、高遠さん。おはようございます。」
まるで花の香りのように私を優しく包む声。
「おはようございます。」
…あれ。
室井さんと挨拶を交わしただけなのに、なんだかほんの少し心が軽くなる。
「総務のは高遠さんが入れてるの?」
「いえ…。今日はたまたまです。私…そんなに気がつく方じゃないし…。室井さんは毎日してますよね?」
「…うん。そうだね。私だって、気が利くってわけじゃなくて…もう習慣みたいなものなの。ふふ。気を付けないと、高遠さんも習慣になっちゃうよ。朝になったらここに来ちゃう…みたいに。」
彼女は手を動かしながら冗談交じりに言った。
最初のコメントを投稿しよう!