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その時、ぼんやりとする私の頭に心地よい声が流れ込む。
「……高遠さん?大丈夫?」
室井さんだった。
彼女の声に答えようとするも、本当に気持ちが悪くて、おまけに頭がぼーっとしている。
私が答えられないでいると、隣の部長が自分の腕から私の手を剥がして言った。
「…なんだかひどい飲み方してな。そっちも藤森君が大変だろう?一緒に二人を送って行こうか。」
「…そうですね。あ、でも、二人とも方向、逆じゃないですか?」
「そうなのか?…でも、室井君も一人じゃ大変だ。先にどちらかを送ってまたどちらかに向かえばいい。タクシーをつかまえよう。」
酔っ払いの私と藤森先輩をよそに、二人の冷静な会話がなんだかむなしい。
部長の腕から離れた自分の手の行き場にも困っていた。
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