年下の男

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その日のデータは約束通りに池口さんが作成してくれた。 彼から内線電話があったので、淡い期待を抱えて経理室に取りに行くと、彼女の姿はなかった。 一日に一回会えればいいとこか。 しかも今日は会話もした。 二人きりで。 少し肩を落としながら経理室を出て総務室を抜ける。 すると、前から大きな段ボールを抱えている彼女。 小さな総務さんがいた。 「高遠さん。」 俺は迷わず声を掛けていた。 「この前はありがとうございました。」 「あ、越石君。」 彼女は大きな段ボールからよけるように顔を俺に向けた。 「その段ボールは?」 「社員配布物の余り。少し余っちゃったから書庫に持っていくの。」 ……書庫。 「俺、持ちましょうか?」 「いいよ。箱は大きいけど重さはたいしたことないから。」 彼女はそう言って段ボール箱を手放そうとしなかった。
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