年下の男

14/34
前へ
/34ページ
次へ
俺が手を伸ばして段ボールを降ろすと、彼女は箱を開けて中の資料を探った。 そして、その中の一つのファイルを取り出すと、また段ボールを戻すように言った。 「ありがとうございます。越石さんも背が高くていいですね。」 何気ない言葉なのに、 彼女の言い方に何か妙な違和感を感じた。 そして、俺は その違和感を確かめずにはいられなくなった。 「……今、誰かを頭に思い描いてました?」 「……え?」 「越石さんも。"も"って。」 彼女は少しだけ目を見開いた。 けれど、すぐに首を振る。 「特に……意味はないんです。ごめなさい」 彼女の目が少しだけ泳いでいたような気がした。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

341人が本棚に入れています
本棚に追加