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俺の手が彼女の手に触れると、彼女は反射的に手を引っ込めようとした。
だけど、そんな小さな抵抗を俺はこの手のひらで包み込んでしまう。
彼女の手の甲と、俺の手のひらが密着している。
俺の手には汗が滲んでいるだろうか。
「またゆっくりお話ししたいです。資料、よろしくお願いします。」
ドアを向いたままで体を固めている彼女の耳元にほんの少しだけ口を寄せて言った。
彼女がドアの方を向いて、彼女の顔が見えないからこそ出来たこと。
首元で感じる自分の血流の激しさに驚きながら、それを微塵も感じさせまいと、彼女に笑顔を向けて俺はドアを押し開けた。
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