341人が本棚に入れています
本棚に追加
その日のデータは約束通りに池口さんが作成してくれた。
彼から内線電話があったので、淡い期待を抱えて経理室に取りに行くと、彼女の姿はなかった。
一日に一回会えればいいとこか。
しかも今日は会話もした。
二人きりで。
少し肩を落としながら経理室を出て総務室を抜ける。
すると、前から大きな段ボールを抱えている彼女。
小さな総務さんがいた。
「高遠さん。」
俺は迷わず声を掛けていた。
「この前はありがとうございました。」
「あ、越石君。」
彼女は大きな段ボールからよけるように顔を俺に向けた。
「その段ボールは?」
「社員配布物の余り。少し余っちゃったから書庫に持っていくの。」
……書庫。
「俺、持ちましょうか?」
「いいよ。箱は大きいけど重さはたいしたことないから。」
彼女はそう言って段ボール箱を手放そうとしなかった。
最初のコメントを投稿しよう!