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「……もう。私をからかいに来たの?それとも他に用事?」
私は雑な手つきで片付けを終えようとしていた。
「別に……用事ってわけじゃ……」
その時、
私は自分の恥ずかしさを隠すために言わなきゃいい一言を言ってしまう。
「あ、何もないのに来るなんて、よっぽど好きなのね室井さんのこと。ここに来れば会えるかもしれないもんね。」
彼はその一瞬、驚きの表情の中に少しだけ別の表情を顔に広げた。
「そういうわけじゃ……。まあ、いいです。じゃあ、お疲れさまでした。」
彼は奥の経理室には視線も向けずに事務所を出て行ってしまった。
一人取り残された事務所内で、隣の部屋からは室井さんの声が小さく聞こえてきていた。
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