夏の入り口

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俺はこんなにも大きなプロジェクトに関わらせてもらうことができて、本当にラッキーだと思った。 もう一つのラッキーは 彼女の仕事ぶりを間近で見られることだった。 経理部であり、社長秘書でもある彼女は、極端に言えば普段は閉ざされた世界にいる人だ。 俺は新入社員で今の彼女しか知らないのだから、仕事が抜群に出来たという話も流れてきた噂にすぎなかった。 それが、今日。 彼女の仕事ぶりを目の当たりにして…実感した。 彼女はまさに『高嶺の花』だ。 口調、表情、態度に仕草。 今までの彼女の経験が生んだものに違いないが、お客様への身のこなしは素人の俺が見ても文句の付けようがなかった。 相手の表情を崩して、雑談までさせてしまうのだから。 俺は彼女の横顔をぼんやりと見つめる。 本当に彼女は…… 手を伸ばしてはいけない存在なのかもしれない。
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