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そして、数日後。
営業部が総力を挙げて取り組んできた商談前日。
各部署には商談スケジュールが伝達されていた。
全部署への通達はそれこそ異例だけれど、それほどまでに特別な相手で少しの失礼もないようにとの配慮だった。
私は、彼が忙しいとわかりつつも…
一言だけでも話せれば…と思っていた。
けれど、そんな想いとは逆に、彼と顔を合わせないまま定時になってしまった。
今日は残業の予定はない。
小さなため息をついて帰り支度を始め、人気(ヒトケ)のなくなりつつある事務所を出ようとしていた。
その時、事務所に訪問者があった。
「…失礼します」
静かな事務所には小さな声でもよく届いた。
聞き覚えのあるその声は
私の今、一番聞きたい声だった。
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