夏の入り口

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会社の正面で、出迎えた時と同じメンバーでK社の車を見送る。 深々と頭を下げて車が見えなくなるまで見送ると、俺たちの中にやっと安堵の息が漏れる。 彼女も例外ではなかった。 大きく息を吐き出して、今にも座りこみそうだった。 「おい、室井、大丈夫かよ」 成瀬さんが声を掛ける。 「…は、はい。緊張しました…」 「飯、まだなんだろ? 早く食べて来いよ。満腹になったらいつも通り元気になるぞ」 「…はい。そうします」 そう言って自動ドアに体を向けた瞬間、彼女がつまずいてよろめいた。 成瀬さんと俺が同時に動く。 …俺の方がわずかに早かったらしい。 次の瞬間には 柔らかい感触が… 俺の腕に触れていた。
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