夏の入り口

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「だ、大丈夫ですか?」 彼女に言葉を掛けると、顔を上げた彼女との距離に驚いた。 「す、すみませんっ。ち、力が抜けて…今日、高めのヒールなんで…」 すぐに彼女を起こそうとしたが、俺は恥ずかしさで上手くいかず、一方彼女も慌てて体勢を整えようとして上手くいかない。 すると、横から成瀬さんの腕が伸びて来て、彼女の腕を掴んでまっすぐに立たせた。 「…すみません。みなさん、本当にお疲れさまでした。午後、社長のお客さんが一人みえる予定なので、すみませんがお昼に行かせてもらいます」 そう言って頭を下げて、小走りで行ってしまった。 そんな風に走ってまた転ばないかとヒヤヒヤしたが俺はその後ろ姿を見送るしかなかった。
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