夏の入り口

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…そう。 あたかも頻繁にご飯を一緒に食べているような言い方だ。 「はあ? いちいちつっかかってくんな。行くぞ」 「待って下さいよ。ご飯一緒に食べてるみたいじゃないですか?」 「ちげーよ。聞いたんだよ。聞いたの。彼女、食べるの好きで、食べた後はご機嫌なんだってさ」 そう言いながら成瀬さんは先に自動ドアを通り抜けた。 俺はそれを追いかける。 そして、成瀬さんはそのまま受付のカウンターに足を進め、受付の藤森さんに話を振った。 「コイツから聞いたんだよ。コイツ、室井と仲いいだろ?」 カウンターの向こうで藤森さんはわけがわからない様子で首をかしげる。 成瀬さんに上手くはぐらかされた気がするが、室井さんと藤森さんの仲は社内でも有名だ。 俺は半分納得したようなしないような、すっきりしない気持ちのまま営業部へ戻った。
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