夏の入り口

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成瀬さんから言われたからじゃない。 だけど… 俺の足は 総務と経理のフロアに向かっていた。 室井さんの存在を確かめたい衝動…それは否定できないけれど、 俺の本当の目的は 経理…ではなく、総務だった。 俺の足は自然に早まっていた。 彼女は定時になれば残業なしで帰る確率が高いからだ。 「失礼します」 気持ちばかりのノックをして、開いたままになっているドアを抜ける。 もう残業時間に入っている。 総務室に人はまばら。男性社員が2人いるだけだ。 「…遅かったか」
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