夏の入り口

27/30
前へ
/30ページ
次へ
俺が独り言を呟きながら廊下に出ると、目の前に段ボール箱が浮いていた。 「うわっ」 それを避けようとすると、段ボールから顔がひょこっと覗く。 「越石くん、何してるの?」 俺はそれには答えず彼女の腕から段ボール箱を持ち上げ、そのまま総務室に入った。 「どこですか?」 「…ごめん。私の机の横に置いてくれる?」 俺は段ボール箱を下ろして彼女に言う。 「…こんな箱持ち出して、今日は残業ですか?」 「ううん。明日の朝一でやりたいから資料だけ運んで来たの」 「…今日はあがりですか?」 「うん」 彼女は返事をした後、顔色をパッと明るくした。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

283人が本棚に入れています
本棚に追加