夏の入り口

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「…早く帰って…休んだ方が…いいんじゃないの?」 高遠さんは視線を逸らして、デスクを片付けながら言った。 「…せっかくだから…一杯だけでも誰かと乾杯…」 高遠さんは手を止めて俺を見る。 「…その『誰か』って…私でもいいの?」 俺の口元が自然に緩む。 「…もちろん」 高遠さんがまた目を逸らす。 「…一杯だけよ。ちゃんと疲れは取らなきゃいけないし」 「わかりました。じゃ、俺、支度してきます。下で落ち合いましょう」 俺は彼女の返事を待たずに総務室を飛び出していた。
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