夏の入り口

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「…やっぱ。来てよかった」 「…え?」 「緊張…かなりほぐれました…」 越石くんはまた大きく息を吐き出す。 「…高遠さんのとこに来たら、なんか、俺の背中押してくれる気がしたんですよ」 越石くんの緊張した顔が崩れる。 越石くんが… …私に笑う。 胸の奥が……熱い。 「…あ、だから…室井さんじゃだめなんだ?」 私は声を潜(ヒソ)めた。 「彼女と話したら…もっと緊張しちゃうもんね」 意識している彼女…。 意識していない…私。 二人の差はこんなにも明確だ。 「そういう意味じゃ…」 彼は無意識にか横目で経理室を見た。 けれど、すぐにその視線を私に戻し、そして逸らす。 「ここのところ…高遠さんに…会ってなかったから」
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