お目付け役

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週の半ばはどこもかしこも空いていた。 俺たちが向かったのは、週末は予約と行列でいっぱいのビアガーデン。 今日はさすがに予約なしでも、行列に並ばなくても席に着くことが出来た。 室内の方がエアコンが心地いのはわかっているけど、俺も高遠さんも迷わず屋外の席にしようと決めた。 「カンパイ」 はしゃいだ乾杯ではなく、俺にたたみかけるような乾杯だった。 …こういうところは妙に年上だ。 「お疲れさま」 彼女はもう一度グラスをぶつけてきた。 その瞬間、 俺は今日こうしてグラスを合わせているのが 高遠さんで良かったと思ったんだ。 誰かに『お疲れさま』って言ってもらえると、 こんな自分でも役にたてたんだってやっと思えてくる。 俺は彼女とぶつけたグラスを口に運び、勢いよく喉にビールを流し込んだ。
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